数学セミナーの記事公開など

ゲーデルと数学の近代

2021年7月9日に訂正を入れた。[訂正]で始まり[訂正終]で終わる部分。

数学セミナー2021年1月号の記事の公開を開始。こちら

この記事と「不完全性定理入門 数学編:数式をなるべく使わない説明 初級編」で使ったホーキングの講演を「不完全性定理によって物理学の万物の理論が不可能だと主張した」と誤解している人が相当数いるらしいのを知ったので、その講演の最後の部分にある「物理学の不完全性定理に当たるものはM理論が証明すると考える」という意味の文の和訳をつけて「不完全性定理入門 数学編:数式をなるべく使わない説明 初級編」に注を追加して説明しておいた。

田中一之さんの文章や、Zachさんの文章からすると、どうも不完全性定理の誤用について書いたTorkel Franzén フランセーン の本でも間違えているらしい。あれほど明瞭な文章でも誤解する人が多い、フランセーンの様なプロでも誤読するというのは驚きだ。と思ったが、フランセーンという人は、哲学者だと誤解していたのだが、これからするとLogic, IT関係の人、つまり理系らしい。

理系の人が文章をちゃんと読めない場合がある、文系の人でも力量がない人の場合にはそういうことがある、ということは、文系に転向した後に自分の過去のことも含めて理解したことではある。

[訂正]2021年7月9日追加。上の二つのパラグラフではフランセーンという人がホーキングが不完全性定理によりTOEが不可能だと主張したという意味のことを書いているが、この時には、田中さんやZachさんの文章を通してそう判断しただけで、フランセーンの書いたものを直接読んでのことではなかった。その後、フランセーンの本のKindle版を買って、読んでみたら実はフランセーンはホーキングが不完全性定理によりTOEが不可能だと主張したとは書いてはいなかった。ただ、自分に都合の良いところだけ使って曖昧に書いてあるために、嘘ではないが、あたかもホーキングがそう主張しているかの様な印象を読者に与える文章になっている。フランセーンの誤読でなければペテンということになる。多分、やはり誤読で、かつ、書き方が悪いのだろう。で、こちらの投稿に詳しいところを書いておいた。[訂正終]

ホーキングがどれほど真面目に「物理学の不完全性定理」について考えていたかは疑問な所がある。要するには、物理学が終わらない方がよい、という願望を上手にゲーデルと結びつけて非専門家向けにおもしろく話しただけなのではないかとも思う。

ホーキングは著書など読むと文系の力を感じる。ケンブリッジでのディラックの記念講演だし、聴衆もそういう人たちを前提に話したのかもしれない。ケンブリッジのカレッジでハイテーブルを経験したことがあるが、ああいう場所では理系であっても文系の素養がないと恥ずかしくて生きていけない。ただ、30年も前のことだから、今はもう変わってしまったかもしれないが…

タイトルとURLをコピーしました