宿題とその略解

毎回適用される宿題

宿題0
講義資料では「話題」などオンライン講義では触れずに飛ばす部分がかなりあります。特に講義資料2の、林がどうやって19世紀のドイツ語手書き文書を読んでいるかは、ほぼ完全に飛ばします。そういう部分を宿題の時間に読んでください。講義資料5の様に、全く飛ばさない資料や、講義資料1の様に「話題」くらいしか飛ばさない資料もあります。ただ、講義資料1では、そういう飛ばす部分にあたるものが、補足資料として別ファイルになっているわけです。

月曜日の宿題

宿題1
補足資料を読んで、現代の不変式の定義を19世紀の定義と比較せよ。
宿題2
与えられた weight と degree を持つ invariant, covariant は存在すれば無限個存在するが、線形独立なものは有限個しか存在し得ないことを証明せよ。

月曜日の宿題の略解

宿題1
こちらは読むだけですから略解はありませんが、補足資料のn変数の場合の線形群の準同型の問題、つまり、講義資料1の(9)の写像がn次の一般線形群の逆群からの準同型になることを19世紀的言語だけで証明する問題は、一言で言いますと「代入と整式の整理という二つの式の操作は可換である」という当たり前の事実を使うと証明することができます。もちろん、20世紀以後の厳密性から言うと、この事実自体を証明すべきで、それはプログラムについての数学理論や、数理論理学で使われる式についての帰納法で証明できます。
宿題2
不変式は加法について閉じていません。違う次数の form を足すと form にならないので、当たり前ですし、同じ次数でも weight が違う場合もあるので、その場合も足すと不変式になりません。逆に言うと、degree と weight を固定すると、加法で閉じますし、スカラー倍で閉じているのは自明です。ということは、degree \(n\) で変数の数が binary などに固定されている form の全体は、有限個の単項式を基にする有限次元ベクトル空間になります。degree と weight を固定した不変式の全体は、その部分ベクトル空間になりますので、これも有限次元、つまり、線形独立なものは有限個ということになります。ただ、もちろん、それが何次になるのかは自明ではなく、それを決定するのも19世紀不変式論の主要な問題の一つでした。ちなみに、degree と weight の組み合わせによっては、それに対する不変式が定数以外は存在しない場合もあります。定数はもちろん、weight 0, degree 0 の不変式ですが、19世紀の人たち少なくとも英国の人たちは、こういうものを式とみなさず、定数ではない式を quantic と名付けて、不変式論は quantic の理論ということになっていました。そのため、19世紀的に言うと、weight と degree によっては、不変式が存在しない場合がある、ということになります。ただ、ドイツでは違う様で、少なくとも Hilbert は、そういう面倒な事はしていません。

火曜日の宿題

宿題3
講義資料2の、この部分の、 \(\mathcal{J}_1,\ldots,\mathcal{J_m}\) の次数が下がるという議論は本当に正しいのだろうか?たとえば、\(\mathcal{A}_1\mathcal{I}_1\) と \(\mathcal{A}_2\mathcal{I}_2\) に高い次数の項が現れるものの、この二つを足したときに、それらが打ち消しあうという状況もあるではないか。どうしたものだろうか。考えよ。
宿題4
講義資料2の有限基底定理を次の様の拡張する。
\(\mathcal{F}_1,\mathcal{F}_2,\ldots,\mathcal{G}_1,\mathcal{G}_2,\ldots,\cdots,\mathcal{R}_1,\mathcal{R}_2,\ldots\) を、変数 \(x_1,\ldots,x_n\) の form の無限列の有限列とする(もちろん、何個の列があるか、その個数は任意です)。その時、ある自然数 \(m\) が存在し、任意の \(k\) に対して、\(\mathcal{F}_k,\mathcal{G}_k,\ldots,\mathcal{R}_k\) を次の様の様に表すことができる。 \[ \begin{equation} \begin{aligned} \mathcal{F_k}&=\mathcal{A_1}\mathcal{F}_1+\cdots +\mathcal{A}_m\mathcal{F}_m,\\ \mathcal{G_k}&=\mathcal{A_1}\mathcal{G}_1+\cdots +\mathcal{A}_m\mathcal{G}_m,\\ &\qquad\cdots\\ \mathcal{R_k}&=\mathcal{A_1}\mathcal{R}_1+\cdots +\mathcal{A}_m\mathcal{R}_m. \end{aligned} \end{equation} \] ただし、\(\mathcal{A_1},\ldots,\mathcal{A}_m\) は、\(x_1,\ldots,x_n\) を変数とする任意の form である。
実は、この拡張は成り立たず反例がある。反例をあげて、それが反例となることを証明せよ。これと、これへの略解は講義資料4で使います。

火曜日の宿題の略解

宿題3
答えは簡単で、「打ち消しあうならば無いのと同じなので全部消して置けばよい」である。現代ではあまり見かけない論法だと思うのだが、私の誤解だろうか。Hilbert の不変式論の証明では、これと同様な議論が要所で使われていて(他の例としては、講義資料3の「忘れられた証明」で、isobaric という性質が、「線形結合」の不変式でない部分に伝搬する所)、林だけの感覚かもしれないが、不思議というか、気持ち悪い感じがして困っている(こんな議論は数学では当たり前に使われているとお考えになる人がいましたら、是非、理由をつけて教えてください。メールでお願いします)。やはり、式の学問か概念の学問かの違いなのかもしれないが、不思議なのは、では、現代数学は、こういうものをどうやって自然に無くしているのかという点である。まだ、納得できる答を得られないでいる。
宿題4
反例は沢山ある。ためしに chatgpt に聞いて見たら、ちゃんと正しい答が返って来た。ただし、証明は間違えていた。ここでは、ある歴史的大数学者が、すこし違うものへの反例として考えたもの紹介しておく。次である。 \[ F_1,F_2,\ldots,F_m=x^1,x^2,\ldots,x^m,\quad \text{and}\quad G_1,G_2,\ldots,G_m=x^1,x^4,\ldots,x^{m^2}. \] その大数学者が書いたものを、ほぼ、そのまま再現している。これは講義資料4で使う。その数学者が書いた、そのものの史料もその時見せる。反例であるという証明は略す。

水曜日の宿題

宿題5
講義資料3の、この部分の2変数の場合の有限基底利の個別証明を完成せよ。ただし、Hilbert が言っていることの細部を改変しても構わない。基本的考え方だけを再現できればよい。とくに \(G,\,H\) の作り方を明確にせよ。ヒント:講義資料3の最初の方で言っているように binary だけは特殊。

水曜日の宿題の略解

宿題5
binary なので、対応する1変数多項式で考えれば、ある種のユークリッド互除法が使えることがわかる。たとえば、\(x^3-x^2y\) を \(x^2+y^2\) で割るという操作を \(\frac{x}{y}=p\) として、二つの form を \(y^3(p^3-p^2)\) と \(y^2(p^2+1)\) と考えれば、\(p^3-p^2\) を \(p^2+1\) で割ることが出来る。form が互いに素であることと、対応する1変数公式が互に素であるのは同値だから \(p\) の多項式のユークリッド互除法で、\(1\) を、これらの「線形形式」で表すことができる。ただし、上の場合だと、 \(y^2(p^2+1)\) に \(y\) を掛けて、次数を上げる必要がある。つまり、剰余は、\(y^3f(p)\) という式になる。この様に互除法の割り算を行うたびに、\(y\) の次数が上がるが、 やがて \(y^n\) が得られるので、これを \(G\) とする。同様に、今度は \(\frac{y}{x}=p\) として、\(x^m\) を得られるので、それを \(H\) とすればよい。

木曜日の宿題

宿題6
歴史的史料を翻刻してみましょう。こちらは、Cayley から Hilbert への二つの手紙をPDFにまとめたものです。3枚目は白紙です。白紙でない4枚を翻刻してください。ただし、数式は翻刻する必要はありません。二つ目の手紙は、Constance Reid が引用していた手紙です。もし、第二外国語がドイツ語とかでドイツ語が出来る人がいましたら、こちらの Hilbert の数学ノートブック1(全部で3冊あります) の7頁の赤枠で囲まれたノートを翻刻して見てください。これは、後に大変有名になるある問題の最初の記述と思われるものです。恐らく、1886年か1887年ころに書かれたと思われます。Hilbert の三冊の数学ノートブックは、public domain になっているので、誰でもダウンロードできます。こちらです。

木曜日の宿題の略解

宿題6
こちらのテキストファイルに解答を置きます。

金曜日の宿題

宿題6
レポートの課題に取り組んでください。