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David Hilbert's Mathematical Maxims |
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Wir müssen wissen. Wir werden wissen. |
ダフィット・ヒルベルト(David Hilbert, 1862〜1943)は、19世紀後半から20世紀初めにかけて活動し、当時そして現在の数学界に多大な影響を与えたドイツの数学者です。数学における彼の業績は非常に多岐にわたり、不変式論をはじめ幾何学の公理化、代数的整数論、関数解析学、数学基礎論、さらに物理学まで、様々な分野にその足跡を残しています。
Göttingen大学に収蔵されているヒルベルトの遺稿の中に、彼が数学のアイデアや思想を短いメモの形でつづった3冊の数学ノート(書かれた順番に、Notebook1, Notebook2, Notebook3と呼びます)があります。そのほとんどの部分は1885年から1910年代に書かれたと推測されており、未発表の彼のアイデアが大量に詰め込まれた貴重な歴史史料です。しかしながら、このノートはその存在自体は知られていたものの、特に数学史上の研究対象とはならず長く眠ったままでした。
近年になって、これらのノートに対する研究が進められるようになりました。イギリスの著名な数学史家Grattan-Guinnessは2000年に出版された著書「The Serch for Mathematical Roots, 1870-1940」のなかで、ゲオルグ・カントール(Georg Cantor, 1845〜1918)の創始した無限集合論に対するヒルベルトの態度が読み取れる史料として、Notebook2を挙げています。一方で、ドイツの数学史家Rüdiger Thieleは、有名なヒルベルトの「23の問題」に含まれなかった「24番目の問題」をNotebook3から発見し、論文「Hilbert's Twenty-Fourth Problem」で発表しました。また、未刊行だったヒルベルトの数学、物理学の基礎に関する講義の講義録を6巻に分けて刊行するHilbert Edition というシリーズの最終巻で、数学ノートの一部が取り上げられることが決まっています。
日本では、京都大学文学研究科情報・史料学専修の林晋教授が数学ノートの解析を進めており、ヒルベルトに対して、また数学基礎論争の起源に対して、従来とは異なった新しいイメージをもたらす様々な記述がノートから発見されています(林教授の研究成果の一部はコチラで公開されています)。
ヒルベルトの数学ノートには、数式や数学的なアイデアをつづったメモだけでなく、数学や当時の社会に対する彼個人の意見を述べた、「格言」とでも言うべきメモが数多く含まれています。こうした文章からは、当時の数学界に対して彼が抱いていた考え、数学という学問自体に対する彼の向き合い方、ひいては彼の人生観まで窺い知ることができ、大変おもしろいものがあります。また、当時の数学者が数学に対して持っていたイメージ、という観点で数学史を考える際には、貴重な歴史史料でもあります。
このページでは、林教授のもとでヒルベルトノートのtranscription, translationのお手伝いをさせて頂いている京都大学文学部の学生3人(寺澤大奈、西尾宇広、橋本雄太) が作業中に見つけた、ヒルベルトの「格言」を紹介します。
※林教授の数学ノート解析は現在も進行中です。現時点でこのページに掲載されている「格言」は、ノート全体に含まれる「格言」のごく一部にしか過ぎません。今後、ノートを読み進める中で「格言」が見つかり次第、このページに追加していく予定です。
Contents
・Notebook1 ―3冊のノートのうちの1冊目。
・Notebook2 ―3冊のノートのうちの2冊目。
・Notebook3 ―3冊のノートのうちの3冊目。
・Profiles ―このページを作っている学生3人
・Mail ―ご意見・ご感想はコチラ
・In English ―英語版
このページは、林晋教授の許可・監修を受け、京都大学の学生(橋本雄太、寺澤大奈、西尾宇広)が作成しているものです。