京都大学大学院文学研究科、林研究室では、ソフトウェア科学・工学、認知科学、情報学の社会学的側面などの研究で著名なUCSD の J. Goguen 教授と、 国内の著名な研究者の方々を多数、お招きして下記のとおり文理にまたがる情報学に関する ワークショップを開催致します。ご興味、ご関心を、お持ちの方は是非ご出席ください。特に学生・院生諸君の参加を歓迎します。
また、ワークショップ初日の13日には、同じ建物で、京大情報学研究科による第8回情報学シンポジウム「ユビキタス社会の未来を拓く 情報通信技術」も開催されます。あわせて、ご参加ください。
情報技術の進歩と、社会運営の中心部分への情報技術の導入に伴い、情報システ ム構築の困難さは、アルゴリズムなどの伝統的問題から、コミュニケーション、 知識マネージメント、価値体系構築、などの人文・社会学的要素が強い問題にシ フトしつつあります。それに伴い、社会学の合理性理論が、ソフトウェア工学の方法論等の研究に有用であることもわかってきています。また、これらの問題を解決するために開発されきたツールや理論の、要求仕様工学、歴史学などへの応用も期待されるところです。
文科省科研費特定領域「情報学」、A01班-27、林晋代表「REASONING WEB」では、 これらの問題をソフトウェア工学に軸足を置きながら研究しておりますが、今回、 その一環として、J. Goguen 教授を始めとする、関連分野の研究者を、お招きして本公開ワークショップを開催します。
2005年12月13日(火)10:00−14日(水)12:20
京都大学百周年時計台記念館2F,国際交流ホール2。会場への交通アクセスは、左記リンクを参照してください。
参加は自由、無料、事前登録不要です。当日、お名前、所属、連絡先を伺います。会場は70名で準備しますが、参加者が多い場合は、100名まで椅子を追加します。もし、100名をオーバーした場合は、先着順とします。
変更履歴: nov/15, 「言語について」を追加。一部の講演に英語の題目、要旨を追加。林の講演の題名を修正。(人文・社会学→人文・社会科学)
nov/21, Goguen 教授の講演のHTMLページへのリンクを作成。
このプログラムは暫定版です。version にご注意ください。
言語について: 一部講演は、英語で行います。講演者名の後の (E) は英語の講演を、(J) は日本語の講演を、(EJ) は、まだ、未定であることを示します。ただし、この講演言語も、今後の変更の対象です。現在、英語(E)となっている講演も、低学年の学生参加者、社会人参加者等を配慮して、日本語(J)に変更していただく可能性があります。日本語(J)となっているものが、英語(E)に変わることは原則としてありません。
10:00-10:50 J. Goguen(UCSD) (E)
題名: Value-Driven Design, Semiotics and Compassion
アブストラクト: It is difficult to design computer-based systems that satisfy users; failure
is common, and even successful designs often overrun time and cost. This
motivates user-centered design methods. But users often don't know what they
need. This motivates ethnography and iterative design. But these are
slower, more expensive, and still can fail. We claim that values are a key
to solving many problems in the design of computer-based systems. Algebraic
semiotics provides a rigorous notation and calculus of representation that
supports specifying functionality, structure and values, while compassion
supports both better analysis and better ethics in design. Together they
constitute a significant move towards value-driven design. Several case
studies will be discussed.
HTML version of the lecture is now available here!
10:50-11:40 黒川利明(CSKホールディングス(2006/1/22修正)) (E)
題名:
十年後のソフトウェア工学--情報システムの立場から
アブストラクト:ソフトウェア工学が今後十年でどうなるかを、情報システムに関係するものとしての立場から考える。プログラミングやソフトウェアが、人間や世界の制度といった大きなソフトウェア=システムに含めて考えられるようになるというのが、大きな流れだろう。例えば、
−ソフトウェア工学はシステム工学に統合される
−システム工学は、大学・高校の基礎科目となる
−システム・インテグレータ(System Integrator)だけを扱う企業は無くなる
−通常のプログラミングは、ソフトウェア設計に吸収される
−ソフトウェア構築の主要作業は、部品検索になる
−ソフトウェア工学の中心作業は、要求の記述と管理とになる
−ユーザの不満を自動収集する機能の開発が進められる
−システムの自己評価機能がプログラムに組み込まれる
−ソフトウェアにエネルギー・環境基準が導入される
−大規模ソフトウェアの信頼性評価のため、ソフトウェアに信頼確率が導入される、など。
Title: Ten year outlook on Software Engineering - from Information Systems standpoints
Abstract: Not avilable in English
11:40-12:00 休息
12:00-12:50 二木厚吉(JAIST) (E)
題名:形式手法による問題モデルの検証(仮題)
アブストラクト:形式手法(フォーマルメソッド formal methods)による問題モデルの検証
について、証明スコア(proof score)による方法の概略を紹介する。また、実世界の問題のモデル化と検証の課題と展望についても述べる。
12:50-14:20 昼休み
14:20-15:10 田中譲(北大) (E)
題名:知識メディアと知識フェデレーション
アブストラクト:1987年に研究を開始した知識メディア技術は、複合文書アーキテクチャに対する視覚的な部品化システムとして出発し、1993年以降は知的資源の再編集・再流通基盤アーキテクチャとして発展した。1998年以降は、Web上の再編集・再流通メディア技術へと発展した。本講演では、研究の推移を振り返り、2002年以降に始めた、Webおよびユビキタス環境における知的資源のアドホック・フェデレーション技術としての知識メディア技術に関する研究成果を紹介する。
Title: Meme Media and Knowledge Federation
Abstract: Meme media technologies that we have been studying since 1987 originally
started as visual component-based system technologies for compound
document architectures, and then evolved themselves around 1993 to
generic media technologies for reediting and redistributing intellectual
resources. They have further developped themselves since 1998 to generic
media technologies for reediting and redistributing Web resources. This
talk will review the evolution of meme media technologies, and introduce
our recent studies on their application to the ad hoc federation of
intellectual resources over the web and/or in ubiquitous computing
environments.
15:10-16:00 西田豊明(京大) (EJ)
題名:会話情報学
アブストラクト:「会話情報学」は会話という現象を中心とした学際的な取り組みである.
会話エージェント,会話環境,会話コンテンツ獲得と管理,会話の分析とモデル化を中心に一つの研究分野として構造化されつつある.本講演では,会話情報学の構想,構成,主な成果,今後の展望について紹介する.
Title: Conversational Informatics
Abstract:
Conversational Informatics is a field of research aiming at investigating human
conversational behaviors as well as designing conversational artifacts that can interact
with people in a conversational fashion. Based on the foundation of Artificial Intelligence,
Pattern Recognition, and Cognitive Science, we attempt to establish a new
technology consisting of environmental media, embodied conversational agents, and
management of conversational contents. In this talk, I will overview the field of
Conversational Informatics and highlight major results.
9:40-10:30 茂木健一郎(SONY, 東工大) (E)
題名:The enigma of consciousness--time and beyond
アブストラクト:Here I present some basic insights into the enigma
of consciousness. The nontrivial problem of temporality in the
information coding in the brain is analyzed, exploring its implications
in a more broader context.
10:30-11:20 吉田純(京大) (J)
題名:CMC空間の社会学的意味
アブストラクト:CMC (Computer Mediated Communication)によって形成される社会空間についての理論を3つのタイプに分類し、それらをギデンズのモダニティ論の枠組の中に位置づけることを通して、CMC空間の社会学的意味を探る。
11:20-11:30 休息
11:30-12:20 林晋(京大) (J)
題名:
ソフトウェア工学と人文・社会科学
アブストラクト:
プログラム検証、Agile 法、UML、要求工学、ソフトウェア産業構造、などを例にとり、ソフトウェア工学の問題が、価値、チーム内コミュニケーションなどの問題と深く関連していることを、M. ヴェーバー社会学の合理性理論、生産工学、経営学等の考え方を援用しつつ指摘する。また、それらの問題へのアタックを容易にするためのツールとして構想されたシステム SMARTの現況と問題点を解説し、さらに、SMART のようなツールを、歴史学などの入り組んだ推論を必要とする人文学に応用する可能性について現実の数学史研究を例に論じる。