Hilbert 不変式論史 -1890年までの-

このサイトは、イントロにあるように2024年度の東大数学でのヒルベルト不変式論史についての数学史の講義の資料をもとにした、その講義で話した内容を紹介するためのものです。講義資料は、このサイトと同程度に詳しいものがあるのですが、講義中に出した課題や、それへの解答なども入っていたので、そのままで公開するのは好ましくないと思い。これを作り始めました。

予定では、まず、このサイトを早々と完成し、それから新たに発見したことを英文論文として公表する予定でしたが、その後の研究の進展で、講義準備中に発見した新知見は、私が当初思っていたより遥かに重要だと考えるようになりました。Hilbertの数学の基礎への関与、つまり、幾何学基礎論、Ignorabimus批判と数学の可解性の主張、物理学基礎論、そして、Hilbert program、これらすべての背景に、不変式論、特に、その中での二つの有限基底定理の発見と、それらの証明への1888年と1890年のGordanによる批判があると主張できるようになったのです。つまり、Hilbertのfoundational studiesの始まりは、素朴集合論の矛盾の発見より10年ほど古いのです。

ただ、それには一つ仮説が必要です。講義中に思い付き、資料3に「暫定的解答」とした書いた、この仮説も、Hilbertの二つの有限基底定理、つまり、正数環上の有限基底定理と、Rationalitätbereich上の有限基底定理の証明を精査して比較することなどにより、直接的証拠はないものの強い自信を持って主張できるようになりました。そのため英文論文の執筆を優先することに方針転換したために、サイトの構築が凍結されています。(RationalitätbereichKroneckerの概念だが、Hilbert は定義を曲げて使っているので、無限体と考えればよい)

結局、英文論文は三つは書く必要がありそうで、相当に時間がかかりそうです。ところが最近、このサイトへのリンクなどしてくださる方があるのを見つけ、講義から1年以上がたち、もう講義資料を、そのまま公開しても大きな問題も起きないだろうと思うようになりましたので、とりあえず、そちらを公開することにします。次のリンクでご覧ください。

2024年度東大数学、数学史講義資料

講義後に誤りに気が付いたことなどもありますが、大きな間違いはありません。ただ、新たに気が付いたこと、判明した事実など多くあり、これは飽くまで研究の途上、その研究のスナップショットをリアルタイムで講義したものとして理解してください。現在の私の認識は、この1年前のものより遥かに整然と構成されています。(2025.12.27)