自己紹介
20歳代終に筑波大学数学で博士号学位を得るまでは、数理論理学と圏論をやっていたが、その後直ぐに情報に転向し、色々な大学を転々とした。そして、修論を書き終わったころに一度転向を試みて失敗していた歴史学に、幸運に恵まれて50歳代になって転向に成功し、その後、最も長く在籍した職場である京大文学研究科で歴史学を中心に人文学の研究・教育を行っていた。2019年に京大を定年退職し、現在は年金生活者。本名は八杉晋(やすぎすすむ)で、林(はやし)は旧姓。「八杉」は、配偶者で数学者の八杉滿利子の姓。より詳しい経歴などに興味があれば、Wikipediaの記事や林のサイトの記事を見てください。
皆さんが、林のことを知っているなら、それはおそらく、八杉滿利子との共訳・共著(解説)の「岩波文庫 ゲーデル 不完全性定理」の訳者かつ解説者としてであろう。 今回は、その文庫の解説でも重要なポイントである、ドイツの数学者、David Hilbert (ダーヴィット ヒルベルト: ヘブライ由来の名前なので v は例外的に濁音) の不変式論研究の数学史についてお話しする。
林は、この20年程、数学の教育・研究から離れていたので、この講義の依頼を受けた時には、不変式論に必須の線形代数の基本もほぼ忘れていた。それから1年ほど、70歳代の頭脳をフル回転させて数学を勉強しなおして、この講義をしている。大分昔の数学の感覚が回復した様な気はするが、あまり自信はない。数学に関して変な事を言ったら、その時は遠慮せずに指摘してください。
林への連絡方法
基本的には、東大のメールアドレス 8773614312@g.ecc.u-tokyo.ac.jp にメールを送って欲しい。ただし、非常勤なので、4月以後は使えなくなるので、もし、それ以後にも連絡する必要があったり、講義以外のことで連絡をしたいときは、hayashi.susumu.2m@kyoto-u.jp にメールを送って欲しい。
講義の実施方法
数学科以外の人もいるらしいので、講義の方法を説明する。林がオンライン講義をするのは3時から5時まで(この間、5~10分程度の休息を一度入れます。一応5分の予定だが、希望により変更可)。
毎回宿題を出すので、5時以後は、それを各自で学習してもらう。宿題は、補足資料を読んでもらうこと、翌日以後の講義で使う数学的事実を各自で考えておいてもらうことなどである。宿題は、宿題とその略解というHTMLファイルに書く。
後で説明するが、宿題は最後の金曜日のもの以外は、採点に関係しない。また、提出物も金曜日のもの以外はない。
シラバスからの変更
シラバスに書いた事から変更が3つある。お詫びするとともに、まずは、これらについて説明する。
その1:評価方法の変更
最初の変更は、成績評価の方法。東大数学の非常勤による集中講義では、毎回、「宿題」が課せられるが、それは採点されず、次回に答が示されるという東大数学の方式を林が理解できていなかったために、シラバスでは、毎回、レポートを課して、それと出席点により採点すると書いた。
その後、林が誤解していることが判明し、採点評価の方法を変えた。シラバスに書いたより、皆さんにとっては楽な方向に変わる。毎回に出題する「宿題」に対して何かを提出する必要はなく、また、原則次回に解答を掲示する。月曜から木曜日の宿題は、5時以後の学習のためで、何も提出する必要はない。
ただし、最終回金曜日の宿題は、「出題したレポートに取り組んでください」という宿題となる。そして、課題に対する提出物のレポートの成績と、出席点により成績の評価を行なう。つまり、シラバスに書いたものより提出物がずっと減るという変更である。レポートの提出期限は、2025年1月10日24時とする。期限が少し早いのは、問題がすごく易しいからです。提出方法は、フォーマットなども含めて出題時に指示するが、原則、PDFでUTOLのファイル添付で提出してもらう。何らかの理由でそれが難しい人は、できるだけ早く連絡を下さい。理由が真っ当ならば対応します。
レポートの問題としては、文系の問題が1問と、純粋に数学の問題2問を用意している。歴史学は文系なので、そちらの問題が主な問題である。数学の問題も出すのは、文系が苦手な人にも合格点をとって欲しいからで、東大数学の皆さんには易し過ぎるかもしれない問題にしてある(こちらは作成済み)。文系の問題も易しい問題で、「これこれについてまとめよ」という様な問題になる予定である。配点と採点方法も出題時に公開する。
その2:講義内容の変更
シラバスに書いたものから、講義の内容がかなり変わる。少し長くなるが、変更とその理由を説明する。
シラバスを書いた時点では、Hilbert の不変式論史についての定説を話し、最後に、Hilbert の時代から現代までの歴史を説明し Hilbert 不変式論の現代数学への影響を明らかする、という風に講義する予定だった。つまり、ごく普通の数学史の講義にする予定だった。
ただ、林が「神学事件」と名付けている数学者間の騒動の定説に対しては、米国の哲学者 McLarty から[McLarty2012]という論文で異説がでている。しかし、この論文は歴史学の常道を大きく踏み外したものなので、その方法と内容を歴史学の立場から反駁し、それにより歴史研究の際に何が重要かということを解説して、独自色を出す予定だった。
ところが、McLarty の異説への反駁用の史料集めの過程で、逆に定説に、間違いや見落としなどの問題点が複数ある事を発見してしまったのである。つまり、従来の説をそのまま話すと、間違いだと分かっているのに、それを講義することになり、嘘をついていることなってしまう。そういう状況に陥ってしまった。
それが8月の中頃のことだった。これでは講義が出来なくなると、大急ぎで定説を修正する研究を開始したが、20年位前に行っていた Hilbert 研究の蓄積のお陰で、研究が急速に進み、11月には、今回講義する内容のほぼ全容が見えてきた。つまり、Hilbert 不変式論の歴史の真の姿が見えてきたわけである。そこで、それを講義することにした。
しかし、それは、まだ、研究途上である。また、まだ客観的評価を得ておらず、みなさんが、それを最初に見る人になる。その真偽は、皆さん自身で判断してもらうしかない。そのため、その判断の一助となるように、林がどうやって研究をしているのか、手の内を見せることにした。つまり、今まさに行われている数学史研究の現場を見せる。ただ、それには時間がかかり本題を話す時間がなくなるので、宿題として見てもらうことになる。
いずれにしても、予定していたこと以外の事に大きな時間を割かねばならなくなり、ある程度は解説するつもりでいた零点定理が導入された1893年の論文[Hilbert1893]以後の話はできなくなった。この点はお詫びしたい。しかし、本当の意味で革命的であったのは、この1893年の論文ではなく、1890年の[Hilbert1890]である。定説の誤りは、この論文を巡ってのもので、そのため講義の重点が、その[Hilbert1890]に大幅にシフトしたのである。そのため、最初に予定していた講義内容より、面白い内容になったのではないかと思う。こういう次第なので、講義内容を変更することを理解して頂きたいと思う。
新しい講義計画の内容をリストしておく。
- Hilbert 以前の19世紀の不変式論史と現代の不変式論との関係(後者は宿題を通して)
- Hilbert 不変式論史1:定説とそれへの異説の説明
- Hilbert 不変式論史2:1890年の Gordan 問題解決論文までの歴史(林の研究に基づく新説1:定説の書き変え)
- Hilbert 不変式論史3:神学事件の真相(林の研究に基づく新説2:定説の史料による補強)
- 1893年の論文と、Hilbert の後の不変式論
その3:講義資料提示の仕方の変更
講義資料は一度に全部公開し、オンライン上のデジタル史料などは予め自分でアクセスして見てもらい、必要に応じて、自分でダウンロードしておいてもらうことにより、現在のデジタル化・ネット化された歴史研究の一端を経験してもらうつもりでいた。そのため、シラバスに、そういう意味のことが書いてある。しかし、この予定を変更し、史料等は、予め用意して講義資料と共に提供することにした。
そして、それを受けて、講義資料は、それを初めて使う日に公開することにした。一度に公開してしまうと、人情として先を読んでしまうから、いわゆるネタバレになり、話がおもしろくなくなるからである。それを今回同時に出そうと思ったのは、上に書いた様に、現代のWEB化された史料収集を、みなさんに自分で経験して欲しかったからである。
それを止めた最大の理由は、みなさんにアクセスしてもらう予定だったWEBアーカイブの一つ Internet Archive が、サイバー攻撃を受けて長期間アクセスが出来なくなり、回復後も異常に動作が重い、ということが起きたからである(詳細はこちらの記事を参照)。
講義期間中に、こういう事が起きると講義ができなくなるので、予め準備しておくことにした。史料の多くには、そのソースを書いておいたし、そうでないものも、タイトルなどを Google search すれば見つかる。WEBサーチの能力も歴史家の重要な能力になっている。是非、自分でも史料をサーチし、また、WEBアーカイブにアクセスして、現代のWEB化・デジタル化された歴史学の一端に触れて欲しい。
以上で、講義内容の変更の話は終である。
講義資料の閲覧方法
講義は、このファイルの様なHTMLファイルを、林のPCで表示し、それをZOOMで画面共有し、それを使って林が説明をすることで進める。そのため、ZOOMにログインしていさえすれば、みなさんは何かする必要はない。もちろん、宿題をやるときは別で、例えば宿題として読む林のサーバー上のHTMLファイルはUTOLの教材としてリンクしてあるので、それにアクセスして読むことになる。
ただ、先ほどまで見えていたが、今は表示されていない講義資料の部分を再び見たいということはあるだろう。そういう時は、教材に講義で使うファイルと同じファイルを、林のサーバーに置いたものへのリンクがUTOLの教材にあるので、それを使って教材のHTMLファイルにアクセスして閲覧すると良い。
ダウンロードの必要はないが、どうしても自分のPCなどにダウンロードしたい人は、ダウンロードの際に必要な準備が、教材の一つに書いてあるので、それに従って欲しい。CSSというものが使ってあるので、そのファイルを三つダウンロードしておかないと、HTMLファイルをダウンロードしただけでは正常な表示がされない。
なお、講義資料のリンクをクリックしてもアクセスできないものがあるのは、林が意図的にアクセス不可にしているためである。使う日になったら、アクセスできるようにする。
イントロの終