「スティーブ・ジョブズの遺言」執筆ノート(1)

NTT出版から刊行予定「スティーブ・ジョブズの遺言」の本格的な執筆を開始。

定年後、生活の変化に戸惑い、依頼されていた本(複数)の仕事も進まない状況だったが、退職後半年を経て漸く今の生活に慣れてきたため、仕事を再開。まずは、もう、依頼されてから長い岩波新書「ゲーデルの不完全性定理(仮題)」の執筆再開と、淡交社の西田本、そして、NTT出版の「スティーブ・ジョブズの遺言」の執筆を開始。

現役中に、特殊講義(自分の現在の研究を話す講義)のために書いていたようなことを、「執筆ノート」として書くことにする。これは、その第一弾。

NTT出版刊行予定「スティーブ・ジョブズの遺言」は、猪木武徳先生のご依頼で書くことにしたもので、人文学的発想や思考がITに如何に必要かを、ITと人文学の両方で仕事をした林の経験をふんだんに盛り込みつつ説明するもの。

題名は、 ジョブズが、Apple のDNAには、Technology そのものだけでは十分でなく、 Liberal arts, Humanities と融合した Technology だと語った、2011年3月の iPad2 お披露目のプリゼンから。 ジョブズは、iPad2のお披露目が終わった後、再度登場して、自らの死期を悟ったかの様に、Apple の社員たち、そして、世界に対して、自ら作り出した Apple の DNA を忘れるなと語りかけた(YouTube画像のキャプションから It’s in Apple’s DNA that technology alone is not enough — it’s technology married with liberal arts, married with the humanities, that yields us the results that make our heart sing — and nowhere is that more true than in these post-PC devices.

画像は、そのプリゼンのApple のDNAの部分の YouTube 動画から林がキャプチャー。

これは知る人ぞ知る有名な話で、英語では、あちこちで読めるのだが、日本ではほとんど知られてない。それが日本のテクノロジーに

或る意味では、「あるソフトウェア工学者の失敗  日本の IT は何故弱いか」の拡張版で、実際、この文章を付録で入れることになっている。

で、そのためのメモを幾つか:

関連図書1:なぜデータ主義は失敗するのか? 人文科学的思考のすすめ
邦題がミスリードだが(英語の題名は、The Moment of Clarity: Using the Human Sciences to Solve Your Toughest Business Problems)、内容は非常に良い。林の考えとほぼ同じ。英語版のアマゾンでの評価も良いようだ。

関連図書2:AI救国論 東大の松尾さんの研究室の出身の若手の本。最近、こういう人文学の意味が分かっている若い優秀な研究者(e.g. 神戸大工の寺田さん)を目にする。松尾さんの deep learning が日本的な製造業に親和性があるので日本にチャンスがあるという論を継承しているし、また、自分たち若いものに責任が一番あるという論点は、「年寄」などに気を使いすぎという気がするが(これは松尾さんも同様)。

関連記事1:京都新聞 天眼 2019年11月24日朝刊 佐和隆光の記事: AIにより人間の労働者の仕事が奪われるということは、GDPの内の労働配分率が下がることを意味し、(GDPが一定ならば)結果として、法人の収入が増加し、法人税の方が所得税より税率が高いので、国の税収が増加する。その増加分を、人文学やら純粋数学などの「金にならない学問」に投下すれば、人文学を再興できるという議論。この様な議論、考えてみたこともなかった。さすが経済学者!とは、いいながら、これもIT・AI学者などが行う「AIが仕事をするならば、遊んで暮らせばよい、哲学して暮らせばよい」というのとあまり違わず、「労働配分率の減少分に対応する人間はどこに行く」ということが全く考えられてない。可能性としては、「金にならない学問をする学者」を想定している可能性があるが、もちろん。それは無理。この「考慮の対象から消えた人々」こそ、トランプを大統領にした人たちだが、日本では、それがなかなか見えない。

メモ1: ピッツバーグは、同市が古い産業から新しい産業への転換例だったためにサミット開催地に選ばれた。Wikipedia 英語版に言及あり。裏を取る。
問題は、確かに成功したのだが、ピッツバーグの人口は激変していること。消えた人たちがいる。でも、多分、中心地域にトランプが買った地域があるのでは?

メモ2:  米国の「消えた人びと」とエヴァンジェリカルズの関係は?「トランプ王国」の続編にあった ホックシールドの本を読むこと!しかし、ホックシールドが自身をエスノグラフィストと規定しているとは知らなかった。一次史料歴史家の林としては大変共感!それにしても良い仕事をする人だ。

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